高速道路の無料化

<第175回>  ☆★☆ 高速道路の無料化 ☆★☆ カテゴリー1 日本の未来⇒
変更カテゴリー5 アクセス イノベ(2010年9月18日)

 民主党注目の政策の第一は「高速道路の無料化」です。麻生内閣の「高速道路の休日1000円」とは全く異なる政策であることが、あまり意識的に説明も報道もされていませんが、無料化の効果は以下の7つが考えられます。

①料金徴収コストがゼロ       
②個人の移動コストが減り、可処分所得が増加
③物品販売、観光業などの収入が増加 
④流通業の経費減で利益増加
⑤流通コスト減で、実質物価が低下  
⑥高速道路入口出口での燃料消費が減少
⑦入口出口が増え、高速移動増加で燃料消費が減少

 一方ではしばしば喧伝される欠点としては以下のものがあります。

⑪道路維持の為の収入がゼロ
⑫道路建設の為の収入がゼロ
⑬高速道路の渋滞

 ①についてはインターチェンジの料金所建設費、ETCを含む設備費、徴収に掛る人件費、その組織の管理費など人と物のコストが全く不要になります。

②は高速料金、ETCのイニシャルと毎月の料金、ガソリン代が減少します。

④は事業者として②の個人と同じように経費が減るだけでなく、無料高速道路を利用することにより、流通に関係する労働時間が減少し、業務の生産性が高まります。

⑤について、流通経費が削減されたことを運送料金に反映してくれれば、物価が下がり、消費者に大きな利益が生じます。社員の給与への反映することも可能で、②の個人には可処分所得が増えます。最終利益増加で、法人税として払ってもらえば、税収増加も期待できます。

⑥、⑦はコストメリットではなく、地球環境への寄与という地球規模のメリットです。

 一方⑪の問題は、道路が走る県の負担でするべきだと思います。もともと国道、県道、高速道路の維持管理を別組織ですることのムダが指摘されています。県道の全体長さに比較し高速道路の長さはあまり長いとは考えられず、県民の利益になる道路の維持管理を県予算で実施するのは当たり前です。

 ⑫については別の方法で財源を創ることになります。つまり効果の③と④は事業者の売上増または利益増につながり、結果としては消費税または法人税または事業者の社員給与に反映していれば所得税としての収入増が期待できます。個々の出口で細かく料金を徴収するというミクロでみみっちい考え方から、国または県が大きな単位で、税として一括徴収すればいいというマクロな視点にそろそろ変換するべき時期です。フリーウェイですよね。

 ⑬については、今まで料金が高いためにガラガラだった道路に車が走れば投資効果が大きくなってむしろ評価されることになります。高速を通る車が増えれば、今まで渋滞していた一般道の渋滞は緩和され、こちらも国民の時間と地球の資源を無駄にしないようになるという大きな意義が生まれます。

 もし無料化で渋滞が起きる高速道路は必要性の高い道路であることが証明されるので、拡幅またはさらに全体としての効果の高い高速道路網を建設したいという道路建設に対する支持・賛同の声も国民からもらえるはずです。人工衛星などを使いマクロに科学的に渋滞を分析した上で、ROI、BbyCの大きな道路を積極的に建設するべきだと考えます。

 全体としては、出入口での料金徴収という発想を捨て、公共の道路は、税として一括徴収した原資で行うというマクロな視点で考えるべきです。


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この記事へのコメント
いつも楽しく拝読しております。
9月3日の毎日新聞1面、3面から、挙げられている問題点を下記に抜粋しました。
私も対策が思いつかないので、もし可能でしたら秋山さんのご意見をいただければ幸いです。

①無料化したら渋滞が激化し緊急医療の一助になるという社会的使命が果たせなくなる(西日本の石田孝会長:神戸製鋼所出身)……(私見:道路建設の拡幅について賛同が得られ、工事が完了するまでの間はこの問題が残ると思います。)

②時速100キロの特殊な空間で、安全を長期・安定的に確保できるのか(東日本道路の八木会長:新日本製鉄出身)

③公平性への疑念
 A. 首都高速、阪神高速の料金の一部が地方の維持管理費に回る。首都高、阪神高使用者が納得するか(道路会社幹部)
 B. 高速道路を使わない人への負担増(秋山さんが既に説明されていますが)

④東日本、中日本、西日本の道路3社で料金収受にあたっている社員、パートら1万6000人の雇用問題
Posted by 道路族 at 2009年09月03日 13:30
道路族さん、良いコメントありがとうございます。

①から順番に考えてみました。

> ①無料化したら渋滞が激化し緊急医療の一助になるという社会的使命が果たせなくなる(西日本の石田孝会長:神戸製鋼所出身)……

石田氏は詭弁の名人のようです。本来高速道路の目的には「緊急医療の一助になるという社会的使命」はありません。ないものを理由にした、無料化反対ではご本人の知能レベルを疑われると思います。

> (私見:道路建設の拡幅について賛同が得られ、工事が完了するまでの間はこの問題が残ると思います。)

には賛成です。渋滞はある程度予想されるため、渋滞による緊急車両の問題については、「高速道路渋滞による緊急車両の到着時間改善予算」をあらかじめ用意するべきだと思います。

渋滞の科学的計測と予測のための予算、渋滞個所の改善策立案予算、道路予算の三つを用意して、BbyCのはっきりしたところから、国土交通大臣の判断でできるだけ速やかに執行できるようにすればいいですよね。

ではでは。
Posted by 秋山雅弘 at 2009年09月13日 08:22
続いて②です。

> ②時速100キロの特殊な空間で、安全を長期・安定的に確保できるのか(東日本道路の八木会長:新日本製鉄出身)

八木さんも詭弁が上手ですね。

高速道路に入る前に、時速100キロで安全運転できる試験をするのですか。関係ないですよね。

もちろん高速安全走行のために道幅や最小カーブを規定し、信号をなくし、歩行者や小動物がはいらないようにしてあります。

その前提がなくならず、料金所だけが減速箇所にならないだけの話です。

料金所での減速がなくなることによる、コスト、燃費の効果は凄いですよ。

八木さん:無料化と安全とは全く無関係です。もっと、勉強して下さい。

ではでは。
Posted by 秋山雅弘 at 2009年09月13日 08:27
次は「③公平性への疑念」についてです。

> A. 首都高速、阪神高速の料金の一部が地方の維持管理費に回る。首都高、阪神高使用者が納得するか(道路会社幹部)

これはダメですよね。首都高速、阪神高速も無料にするべきです。もし、渋滞しないように、現時点で過密のところは道路幅を2倍にするような工事をすぐに予算をとって始めるべきです。首都高の渋滞はほとんど、合流地点なのでそこへの対処が十分できれば、渋滞しない高速が実現し、都内、府内の一般道はすきすきになりそうです。

道路公団なんかに計画を任せているのでだめなので、中央官僚の頭のいい人と、都庁の元気な人で、「首都、大阪府次世代交通研究会」をつくり、科学的な根拠で都市交通計画を練り直して欲しいですね。

オリンピックが来ても来なくても・・。
Posted by 秋山雅弘 at 2009年09月13日 08:41
もう少し広い意味での「③公平性への疑念」についてです。

> B. 高速道路を使わない人への負担増

この議論については「政治の原点は富の再配分」というところに立ち戻ります。

社会的弱者のために、税金があり、その税金で、再配分が行われます。

それが、手当などの直接支給になる場合と、公共医療などの間接的なサービスになる場合があると思います。

道路は間接的なサービスなので、全額税金で賄っても問題ありませんよね。

一例を出します。寝たきりの生活を余儀なくされている方がいて、「私は道路を使わないから税金で道路を作ってほしくない」といったとします。「市道を歩く人のお金で市道を、県道を歩く人のお金で県道を、高速を通る人のお金で高速道路を作れ」というでしょうか。

道があるから、介護の人も来るし、火事があれば、消防車がきます。犯罪が起きればパトカーが来ます。

今公平性のことを口にする人は、すべての道がネットワークとして繋がっていること、それにより全ての市民生活が繋がっていることを忘れているのではないでしょうか。
Posted by 秋山雅弘 at 2009年09月13日 08:49
他の方の質問ですがぜひ答えていただきたい。

④東日本、中日本、西日本の道路3社で料金収受にあたっている社員、パートら1万6000人の雇用問題
Posted by ぜひ at 2009年09月19日 06:59
ぜひ・・さん、大事なコメントありがとうございます。

コメントが遅くなり失礼しました。少し数字を調べてから・・と思いながら、中々時間が取れなくて・・。

まず日本の基幹を支えていた農業について調べました。

1975年と2007年を比較すると790万人から310万人へと32年間で480万人の減少で。毎年15万人ずつ失業したことになります。直近の1990年からの17年間でも毎年10万人ずつ減少していいます。

日本全体の失業者数を調べました。

1996年に210万人、2009年現在時点で360万人の失業者がいるので、13年間、毎年11万5000人ずつ増えています。

ただし、昨年のリーマンショックの頃の失業者は260万人ということを考えると1年間で100万人失業者が増えたことになります。

それに比べると1万6000人は多いのか少ないのか・・。少なければいい・・という議論ではマイノリティの切り捨てになるので、もう少し人道的な配慮については、3つの道路公団に義務付ける必要があると思います。

たとえば会社都合による退職金の積み増しです。一人1000万円として、1600億円の一時的費用がかかります。ただし、皆さん公務員クラスなので、年俸も1000万とすれば、翌年からは年間1600億円の費用が要らなくなります。

一方で、最初に示したリーマンショック以降の失業者のほとんどは、非正規の雇用や派遣のため、失業手当も少なく、退職金もほとんどない筈です。農業から離脱した人も、雇用保険適用外、退職金なしだと思います。

北九州や夕張の例にみる石炭産業の衰退による企業の倒産や失業、改札自動化による駅の切符業務の人員削減など、時代とともに、仕事は変わります。

公務員という安定職を選んだ方々なので、個人の生活への補償についてはしっかり考えながら、高速道路での料金徴収という時代遅れの仕事から早く解放してあげるべきではないかなと思ってしまいます。

お答えになったでしょうか。
Posted by 秋山雅弘秋山雅弘 at 2009年11月02日 17:40
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