<第78回> ☆★☆ 大丸の弱み ☆★☆
引き続き松菱跡=大丸についてです。強みも弱みも大丸サイドでプロが十分に検討した上での進出だとは思うため、素人のお節介という気分を自覚しつつ、お話したいと思います。
★大都市と地方都市の違い・・
当たり前ですが、東京大阪名古屋の成功例をそのまま浜松に持ってきてもなかなか上手く行きません。今まで浜松から撤退した非地元資本の大規模店舗を見れば、丸井、西武、イトーヨーカドーがあります。
時代に合わなくなったためか、売り場面積が拡張できなかったためか、その他の複合した背景があったのか・・。
★スプロール化とストロー化
交通手段の発達、人口増加などの要因で、町は発展とともに拡張します。いわゆるスプロール化、ドーナツ化の結果として、中心部の衰退が起こります。一方で、年齢構成の変化、便利さを求める生活習慣、土地の適正価格化、景気変動などの要因から反対に中心に集まる時期もあります。
★東京も地方も
東京も都心の過密状況から、スプロールを政策的に行った時期もありました。新宿、臨海副都心、みなと未来21、幕張などはその例で、その後、恵比寿、六本木、大崎、品川、汐留、丸の内、八重洲、銀座という中心部に再開発の地域がが移行しています。その意味では、浜松も東街区などの中心への人口回帰が見られています。(失礼、この話しは『強み』のところで触れるべきでした。)
★街への重力
一方では住民の増え方程度では活性化した中心とは言えないため、流通顧客の流入に重点を置いて考えれば、やはり『街に人を惹き付ける引力』と、『腰を重くする重力』のバランスが、崩れない限り、人は街にはなかなか出てこないのも節理でしょう。(失礼、この話しは次回『重力』の話題でした。)
★大丸の弱み(および脅威)を考えてみました。
①3年先では遅すぎる。
官に関係しすぎたため、進捗進度が遅く、3年先開業では、浜松中心部はさらに衰退している心配があり、また製造業中心の浜松のポテンシャル、日本全体の景気が落ちた時期の開店になる。
②フラッグシップへのこだわり
34000平米の面積で、今の遠鉄と同じ広さあたり売上が達成できれば
年商550億円。ただし、二番手の遠鉄の売上は1.6分の1と仮定すると、約140億減少し、250億程度になる。両方で800億の売上が達成できるかと考えれば、今の遠鉄寡占状況の2倍はなかなか難しい。地域の購買力はそれほどには高くないはずだ。
③土日の賑わい
製造業が多く、街中には居住人口も就業人口も少ないためどうしても人は土日に集中する。結果的には車での来客が多く、今の駐車場容量では800億のデパートでの売上を確保できない。自前駐車場を地下に作れば、その出入りで渋滞を招くことは、遠鉄駐車場を見れば自明だ。駐車料金の問題もあり、折角街に出ても、もし5000円以上の買い物をしなければ、高い駐車料金を払い、渋滞を我慢して・・となれば、だんだん重力が増えてしまう。
④ターゲットとライバル
静岡の109が14000平米で、適正規模だと思われる。この地域にはMAYONEとZAZA中央館、サゴープラザという若者向けのエリアもすでにあり、大丸がその層を狙えば、他の店舗の売上を食ってしまう。一方で、高級志向、専門店、ブランド店だけで、34000平米は使いきれないのではないだろうか。いずれにしても、最初の3ヶ月を過ぎ、1年を過ぎた頃まで、しっかりと引力を維持するには、地域を十分熟知した上での戦略が必要だろう。
★東京はキャパシティが大きい・・
東京は巨大な恒星のように、どんどん周りを吸収し、自重を増やし、さらに引力を強くしているように感じます。一方では浜松は、今の産業政策のままでは、それほど成長も大きくなく、むしろ必死に地域の生残り、地域間競争に取組まなければ、衰退の脅威さえあります。
大丸の進出で、まちなかに巨大な投資が行われ、結果としての地域力が強くなれば、もちろん嬉しいが本心です。ただし、もし失敗した時の利息を市民が負担するのではタマリマセン。
★環境の破壊??
松菱跡にある、新館や駐車場ビルというまだまだ使える資産を壊して(結果としてCO2増大の活動)まで、大きな建物のデパートが生まれます。最後に撤退して旧松菱ビルより大きな廃墟を作らないような、見栄を張らない慎重な進出を、大丸経営陣には期待しています。
読者の方からみて、他に弱みと感じているところがあれば、是非コメントしてください。
ではでは。